
防災
■ 厚生労働省「災害時の発達障害児・者支援について(pdf)」
避難所等における障害児者やそのご家族に対して、発達障害等の障害特性に応じた配慮の例などをまとめています。
■ 日本自閉症協会「災害時における防災・支援ハンドブックとヘルプカードをご活用ください」
被災後の心のケアなど配慮事項などの書かれた「防災・支援ハンドブック」が出ています。
障害別に障害に応じた準備や対応の情報、災害別の心がけなどが掲載されております。
「発達障害」「精神障害」「知的障害」の情報もあります。
■ 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「災害時の発達障害児・者支援について」
被災地で支援に関わる方に理解しておいていただきたいこと、家族の状況の確認やストレス、健康状態の確認、自宅での対応などについての提案が書かれています。
神奈川県内の33の市町村ごとの防災対策についての情報ページと、家の中の防災対策、備蓄、健康管理、ラジオや伝言ダイヤルについての情報があります。
アンケート期間:2024年5月2日~5月21日
回答数:53件
以下はアンケート集計結果およびアンケート回答からの抜粋です。
→ 本資料のpdf版はこちらからダウンロードできます。
■ 要約
この防災アンケートでは、自閉症児者の親がどのように災害に備え、避難時にどのような課題を抱えているかが明らかになりました。多くの家庭で飲料水や食料、簡易トイレ、薬などの備蓄をしており、特に偏食や医療的ケアを考慮した備蓄が重視されていました。避難について親子で話し合う機会は少なく、「話していない」との回答が目立ちました。通勤・通学時の対応については、「話していない」家庭が多いものの、一部ですが、帰宅方法や避難所での待機場所などの対応を検討していました。
地域の避難訓練への参加率は比較的高いものの、障害特性に配慮された訓練が少なく、参加が難しいと感じている家庭もありました。避難所生活については、人混みや騒音、環境の変化に対する不安が強く、自宅避難や車中泊を選ぶ可能性が高いことが分かりました。避難所で求める支援としては、個室の確保や視覚支援、必要な物資の提供が挙げられていました。また、行政への要望として、障害者専用の避難所の設置や地域住民への障害理解の啓発活動が求められていました。
■ 設問ごとの要約
Q1: ご家庭で防災備蓄(食料・水・薬等)していますか?

多くの家庭で水や食料、薬、簡易トイレなどを備蓄していました。特に長期保存可能なものや、子どもの偏食を考慮した食品のストックが重要視されていました。子どもを落ち着かせるための安心グッズ(例:ネット無しでも見れる動画データ、レスキューキャンディ等)。防寒着や着替え、下着なども含まれていました。
- 保存ができる食料。アレルギー・偏食対応食品の確保。子どもの食べられる食料。
- いつも飲んでいる薬、使っている薬の確保。救急セット(常備薬・シップ、絆創膏、消毒薬等)
- 寝袋、カセットコンロ、簡易テント、防寒シート、ゴミ袋、ラップ、紙皿、紙コップ、衛生用品、ティッシュ等
- ローリングストックの実施(備蓄品を消費期限まで食べきって、新しいものを買う)
- 防災ラジオ、ラジオ付き充電器、LEDランタン、電灯、懐中電灯、電池、充電器。
- 本人がネット無環境で楽しめる動画データ(マイクロSDカード、外付けHD)やクラウドデータ。
- 自家用車の中に防災グッズ、通所のバックに10日分の備蓄薬
- レスキューキャンディ(不安を和らげる効果があるとされるキャンディ)等、安心グッズ。
- 着替え、下着、防寒用品(服・毛布・ポータブルストーブ、羽織るアルミシート等)
- プレミアム・ウォーターを契約して、巡回型の水確保をしています
- 防災トイレ(簡易トイレ・ポータブルトイレ・トイレットペーパー)
- 生協の防災3日分買い置きセットを、毎年買って入れ替え
- マスク・消毒液
Q2: 防災について親子で話し合ったことがありますか?

「話していない」という回答が多く、具体的な防災対策についての話し合いが不足していました。話している場合は、避難経路・避難場所・待ち合わせ場所の確認や災害時の身の守り方について説明をしていました。
- 避難所には、行くのは、子どもの特性上難しそうなので、自宅避難になることを前提に準備している。
- 避難所に登録しておくと、自宅避難でも配給や情報がもらえる。
- 災害にあった場所によって、誰に頼るのか、どこへ避難するか、子どもに説明した。例、施設なら○○さん。
- 地震が起きた時の身の守り方を説明。家のどこが安全か、実際に家の中を探索した。
- 避難場所を具体的に子どもに説明、もし親が居ない時に被災した場合について話合った。
- お互いの居場所を知るためにGPSの使用の方法や、災害用伝言ダイヤルの使い方を教えた。
- 職場で災害に遭った場合の避難や連絡方法などを確認。自宅へ戻らす、そのままとどまることがあると説明
- 避難所がどこか、確認。一人でいる時に災害にあったら、どうするか、具体的に伝えた。例、近くの小学校
Q3: 通勤・通学時に被災した場合にどうするか、子どもや支援者と話し合っていますか?

「話していない」という回答が多く、具体的な対応について話し合う機会が少ないことが分かりました。話している家庭では、帰宅手段や避難所での待機場所などを、具体的に決めていました。
- 防災グッズのポーチを作って、親やグループホームの連絡先、お菓子、ウェットティッシュ、ゴミ袋、ホイッスル、ミニライト、アルミ毛布を持たせている。
- 駅や電車内で被災したら車掌や駅員の指示に従う、会社や会社の最寄り駅にいるなら、家に帰らず会社で避難させてもらうことを伝えている。
- 会社や学校の場合は、滞在先の人の指示に従う。慌てず平常心を心がけるよう言ってある。
- 親が迎えに行くまで、職員と職場に待機する旨を説明。
- 電車など公共交通機関が使えない場合、歩いて帰宅することになるので、その練習をしたことがある。
- 本人のわかる言葉で、状況を簡単に説明して今どうしたら良いか伝えて下さいと頼んでいる
- 電車で災害にあったら、この駅だったらココに行って助けを求める確認済み。
Q4: 個別支援計画に防災についての記載がありますか?

「いいえ」という回答が多く、個別支援計画に防災についての記載が含まれていないことが分かりました。
Q5: 地域の避難訓練に参加したことがありますか?

「参加したことがある」という回答が多くありました。一部の家庭では、避難訓練に参加するためには、周りの人の障害への理解や配慮が必要だと感じています。あと、どういう配慮があれば、参加出来ると思いますか。
- 知的障害が重く、言葉もほとんど理解できないので、防災訓練の状況を理解するのは難しくじっとしていられないので参加は考えていない。
- 障害者の避難出来る部屋等、具体的に確認出来るなら参加してみたい
- 自閉症に対する理解。パニックになった時などにそっとしておいてくれる
- 避難訓練参加者募集の時点でポスター・チラシなど告知から、「障害のある方、高齢の方も参加してください」のアナウンスがあると、健常者の方も心づもりが出来ると思う。
- 時間に余裕を持った避難訓練。もしくは逆に、短時間であれば参加可。皆と同じことをするよう言われない、
- タイムスケジュールや視覚的支援の導入
- 事前に、障害のある方への、理解を深める研修の実施
Q6: 日中の活動場所にどのような防災の備えがあるか知っていますか?

「知らない」という回答が多く、活動場所の防災対策についての知られていないことが判明しました。知っている場合は、防災訓練や飲料水や食料、避難用ヘルメットなどの備蓄がどのくらいあるか伝えられていました。
- 水、食料、非常食(アルファごはん、缶詰パン、レスキューキャンディ等)を、2日〜3日分備蓄。
- 薬、備蓄薬は、個人で数日分確保。
- 避難用のヘルメット、笛など見える所に置いてある
- 防災備蓄倉庫は、地震対策で倒壊のおそれのある建物内でなく、外部に設置されている。
- 養護学校時代は、入学時に、常備薬、毛布、着替え等のセットを一式学校に預けていた。
- 特例子会社は、海が近い為、津波対策で、どのビルの屋上にいくのか指示されている。水と食料は、3日間分の備蓄があるといわれている。
Q7: 日中の活動場所で被災したらどのような支援をしてもらえるか知っていますか?

「知らない」という回答が多く、支援内容について十分な情報共有がされていないことが分かりました。知っている場合は、避難場所への誘導や職員とともに待機するといった対応があることが分かりました。
- 宿泊させてもらえる。毛布等が準備されている。
- 会社や施設の指示に従うよう伝えてある。避難場所への誘導と保護者が迎えにくるまでの預かりをしてくれる。安全の為、交通インフラが使えるようになるまで事業所内で待機する。
- 食料や毛布など、備蓄品をもらえる。
- 地域の避難所へ避難(事業所で毎年地域の防災訓練に参加)
- メールで保護者に連絡がくる
Q8: 自宅で被災した場合の避難場所を知っていますか?

Q9: お子さんや家族は避難所生活ができると思いますか?

「できない」との回答が多く、人混みや騒音による不安、環境の変化への対応の難しさが指摘されました。できる場合は、比較的静かな環境で過ごせる避難所であれば対応できると考えていました。
- 大きな声をだし、多動。聴覚過敏があるため(小さい子の声が苦手、臭いや音)、体育館のようなところにはいられないと思う。個別の部屋があれば、出来るかもしれない。
- 障がいの特性上、他の避難者に迷惑をかける(奇声、動き回る、こだわり)
- 環境の変化に弱く、障害特性により集団生活の避難所は難しい。
- どこまで非常時と認識し行動を抑制または周りに合わせられるかわからない。ただし、親といない場合には職場同様、できうる限りの協調性を発揮すると予測できる
- 重度の知的障害を伴う自閉症のため、状況を把握できず、じっとしていられず、常に大きな声を出すので、他人に迷惑をかけることは明らかです。人がたくさんいる場所は苦手なので本人にとっても避難所は到底落ち着ける場所ではありません。
- 偏食があり、食べられる物があるかわからない。
- ・ 短期なら避難生活はできるし、避難所の流れに合わせられるが本人にとっては、かなり強いストレスとなり我慢しすぎて体調が悪くなりそうで心配。
Q10: 避難所でどういった支援や配慮があれば良いと思いますか?
個室の確保や障害特性を理解した支援の提供が求められていました。
- 出入口近くに居場所を確保してもらう。
- 視覚的支援の導入。声掛けでなく、読んでわかる文字で書く、一目見てわかるマーク、写真等を活用。例、トイレ、ゴミの分別など
- 家族単位の静かな個別スペースの確保。個別スペースに「要支援」のマークで周り周知し、理解を得たい。
- 子どもから目離せないので、配給など取りに行かなくても届けてくれると助かる。
- 障害特性上、支援や配慮があっても根本的に難しい
- 平時は理解があっても、非常時は皆が精神的に不安定なので、同じ場所で過ごすのは難しいと思う。障害者・家族が、一緒に避難できる別の避難所があると良い。
- 非常時であり難しいと思うが、一人になれるスペース。
- 非常食は、栄養度外視になるがビスコやポテトチップスなどのスナック菓子、飴やタブレットなど普段食べているものを用意してもらえるとありがたい。
- 避難所では、要支援者と家族の存在を知って欲しい。第一避難所に先ずは、行く事になっているが、本人と家族が行かれない場合もある。避難市民の登録を電話やメール、LINEなどでも受けてほしい。
- まわりの人の障害理解。
- 話を聞いてくれる人がいる。
Q11: 実際に避難した経験はありますか?

「経験なし」という回答が多く、実際の避難経験を持つ家庭は少ないことが分かりました。経験がある場合は、個別スペースの確保が役立ったことが報告されていました。
- 避難所の担当が子ども関係の課の職員だったため、発達障害に理解があり、ひとつの教室をまるごと我が家用に使わせてくれた。支援物資の円滑な提供。避難したら、布団も、食料も無かった。
- 普段あまり関係の良くない父親と同室だったため、「もう二度と避難しない」と避難後に宣言されてしまいました。
- 障害児を連れた避難だと伝えたが、どんな支援が欲しいか聞かれなかった。
Q12: 地域の避難行動要支援者に登録していますか?

Q13: グループホームに入所している場合、住民票の移行に登録できないということを知っていますか?

Q14: 災害時にあったら良い支援、受けたい支援を教えてください
在宅避難の支援や障害特性に配慮した対応が求められていました。
- 当事者へ、今起きている事を簡単に説明してほしい。(自分は)どうしたらいいのか伝えて欲しい。
- 自宅避難者への配給支援。例、支援物資の受け取り代行、障がい児者の一時預かり等
- 親が動けなくなった時、子どもを見てくれるボランテイア支援。動けても家の片付けや買い物とかは、子どもと一緒だとできないと思う。できるだけ早く、通所等の福祉サービスを再開して欲しい。
- 誰でも使えるインターネット環境。スマホが充電できる。
- 時間を気にする人が多いので、時計が常備されているとよいと思う。
- 子どもが周りに迷惑をかけている場合など、こちらから要求がいいにくいので「どうして欲しいですか?」「何か困ったことありませんか?」と、声をかけて欲しい。
- 地震による被害状況、支援の中身などを、ボードや放送などで知らせてほしい。
- 避難所の運営マニュアルに、障害者が居る場合どう対応すればいいのか、しっかり書いておいてほしい。
- 個別スペース・音の軽減・視覚的な説明書き・周囲の人へ障がい理解を促してくれること
- 避難所に行けず車中避難でも支援物資が届けてほしい
- 自閉症だけでなく、外国籍の方、認知症の方もいらっしゃるので、見てわかる「視覚支援」をして欲しい。
- 騒がしい所が苦手なので一般の方と部屋を分け、静かな空間を確保。視覚でわかるようにして欲しい(写真、絵とかで説明)。
- 障害特性を理解できる方がいる。災害時の障害者・高齢者向け相談窓口の設置
- まず避難所には困難をかかえる存在があるということを認識し、当事者、知識を持つ方々の勉強会からでも始めてもらえたら。
- 過去の災害時の避難所経験者の話もききたい。「うまくいった支援」をシェアして欲しい。
- 親の会の仲間と過ごせる場所があれば、本人達も緊張せずに過ごせるのではないかと思います。
- 避難所生活が難しい障害者のいる家庭などに、ショートステイできる場所、老人ホームなどの空き部屋の提供など、避難所と別に安心して生活のできる場があると良い。
- ASDの特性に配慮した避難場所の確保、日頃からのASDの理解、人材育成
- 多様な配慮が、必要になっている今だからこそ情報収集と訓練の必要性が求められると思います
- 避難所で、「ウロウロしたり声を出してしまう人がいる」、「個別スペースを優先的に必要としている人がいる」、(親と離れてしまう可能性もあるので、)「大人・中高生であっても迷子?になる人がいるので、そういった人を見かけた時は、行政や消防などにつなげていってほしい」、こういった事を一般の人たちに伝えて言ってほしいと思う。
- ・ 福祉避難所の運営についてシュミレーション訓練。健常者との境目をどう分けるのか明確化を要望。
- 福祉避難所の開設、通常の福祉サービスの早期復帰、本人ができる役割の分担(高齢者の給水の水の運搬など)
以上、アンケートからの抜粋です。